ヒューレット・パッカード社の歴史（前編）

1. 創業と初期の歴史（1939-1949）
ヒューレット・パッカード（HP）は、1939年にスタンフォード大学の学生であったビル・ヒューレットとデビッド・パッカードによって設立されました。彼らは共同で作った会社を「Hewlett-Packard Company」と名付け、最初の事業として音響機器の製造を開始しました。最初の製品は、オシロスコープの一種である「HP 200A」で、主に音楽や音響実験用に設計されていました。

HPはサンフランシスコのガレージでスタートしました。このガレージは後に「シリコンバレー」として知られる地域の象徴的な場所となります。ヒューレットとパッカードは、カリフォルニアの企業文化と技術革新を融合させ、実用的かつ高品質な製品を追求しました。

1940年代に入ると、HPは軍需産業にも関与するようになり、第二次世界大戦中に計測器や通信機器を製造しました。この時期の経験は、同社の技術力を高め、戦後の成長の基盤となりました。

2. 成長と多様化（1950-1970）
1950年代には、HPは計測機器のリーダーとしての地位を確立し、オシロスコープ、信号発生器、デジタル計測器など、多様な製品を展開しました。また、1957年には「HP 2116A」という最初のトランジスタ式コンピュータを発表し、コンピュータ市場への進出を果たしました。

1960年代に入ると、HPはさらに多くの技術革新を行い、1972年には初の計算機である「HP 35」を発表しました。これは世界初のポケット計算機とされ、瞬く間に人気を博しました。この成功は、HPのブランドを世界中に広めることに寄与しました。

また、1970年にはHPの株式が上場し、企業としての成長が加速しました。ヒューレットとパッカードは、企業文化として「管理は個人に委ねる」という方針を強調し、従業員の自主性を尊重する環境を作り出しました。

3. コンピュータとプリンターの革新（1980-1990）
1980年代には、HPはコンピュータ業界に本格的に参入し、特にグラフィックプリンターの分野で革新をもたらしました。1984年には「HP LaserJet」を発表し、レーザープリンター市場に革命をもたらしました。この製品は、印刷品質と効率性の面で大きな評価を得ました。

また、1980年代後半には、HPはパーソナルコンピュータ市場にも参入し、HP Vectraシリーズを発表しました。これにより、HPはコンピュータ市場における重要なプレイヤーとなり、多様なビジネスニーズに応える製品ラインを展開しました。

後編に続く